みなさんこんにちは。MIHO氏です。
本日はタイトルにもある通り、猪苗代湖一周コース作成の経緯と、背景についてお話します。
きっかけは自転車イベントではおなじみのLinkTOHOKUさんのブログ記事になります。
集え自転車愛好家!猪苗代湖周回コース 郡山・磐梯熱海に新拠点https://www.minyu-net.com/news…
今回のこの記事のタイトル【イナイチ(猪苗代湖一周)に見る行政対応の典型的なNGパターン】。
記事を拝読させていただいたところ、イナイチコースの問題点を挙げておられます。
最初に申し上げますと、このコースを作ったのはこのわたしです。
詳しくお伝えすると、自治体の担当の方からいただいたコース案をもとに、わたしが現地に行って視察をし、修正点を指摘し、改善して出来上がったのがこちらのコースです。
My Maps makes it easy for you to create beautiful maps and s…
まず初めに、これだけはお伝えしたいのは
LinkTOHOKUさんの記事に反論する意図ではないということです。
これは、わたしのツイッターでも書きましたが
コースというのは、作るのは地道な作業だしテクニックも知識も求められるくせに、
そのコースに込めた想い、情熱、経緯や背景などは伝わりづらい。
作り上げた【コース】がポン、と世に出されるだけです。
これでは、なんかちょっと寂しいですよね。
今回の記事を書かれたLinkTOHOKUさんにも伝わっていないポイントがあり、ということはもちろん、猪苗代に来てほしいと思っているサイクリストにも伝わっていない。
これを機に、なぜわたしがこのイナイチコースを設定したか?ということ、経緯や背景を幅広くみなさんに知ってほしいと思い、この記事を書くことにしました。
ぜひ、これからコースを作ってみたい!もしくは、人の作ったコースを走ってる!走りたい!というみなさんに読んでいただきたく思います。
はじめに
このコースは、上記コース写真右側からスタートし、猪苗代湖をぐるっと回って戻る
全長約82kmのコースです。
①②というのは立ち寄りスポット番号です。
観光スポット、休憩ポイント、ランチやスイーツなどグルメを楽しめるお店などが記載されています。
公式では反時計回りを推奨しております。
これは分かりにくい記載だったかもしれませんが、立ち寄りスポット番号が若いほうから順に巡っていくという設定です。
また、このコースはサイクルイベント用のコースではありません。
あくまでも、個人でイナイチ(猪苗代湖1周)を楽しんでもらうためのコースです。
【ご指摘1】猪苗代湖一周スタート地点が磐梯熱海駅という設定が間違っている

まずひとつめ。
スタート地点が磐梯熱海駅という設定が間違っているというご指摘です。
上の写真ですと、右側の⑳と書いてあるあたりが
スタート地点(磐梯熱海駅)になります。
そこから、猪苗代湖に向かっていく国道49号(赤い矢印の部分)が、ご指摘の通り交通量が多くスピードの速い車も多い。
しかも路側帯が狭いポイントも多々あり、視察時、まっさきにわたしは
「この道はカットしたい」と申し出ましたが、
自治体、地元の希望で、磐梯熱海温泉を利用してほしいという想いがあり、
磐梯熱海温泉(ルートマップ⑳あたり)から猪苗代湖に向かうには、この道を入れ込むほかありませんでした。
また登り基調なので初心者には難しい
というご意見ですが、
まず、そもそもこのコースを作るうえでアプローチしようと決めていたターゲット層は
中級~上級者サイクリストの層です。
初心者、ビギナーレベルのサイクリストはターゲットから外しています。
これは、このコースが掲載されているホームページ【ふくツー】にも記載されております。
なので、ヒルクライムというほど登らないし、あくまで登り基調であるだけなので、中級~上級者にとっては特に問題ない道だろう、と考えました。
なお、
猪苗代駅スタートが良いのではというご指摘ですが、
そうなると利用してほしい磐梯熱海温泉から離れてしまいます。
ので、どうしてもこの国道49号をコースに入れ込む必要がありました。
提案したい解決策
まず、自治体、地元の人たちが、
自分たちが持っている観光資源をたくさんの人に利用してもらいたい、魅力を知ってもらいたいと思うのは当然のことだと考えます。
磐梯熱海温泉は、開湯より約800年、国内でも有数の温泉地として有名です。
猪苗代湖サイクリング後に磐梯熱海温泉でゆっくりする。
最高のプランだと思いませんか?
なのでこれに関してはもう、【国道49号の道路整備】しかないかなと思います。
路肩が狭く、路面状況もあまりよくないポイントの自転車の通行環境を整えてもらうことが最優先だと感じます。

また、LinkTOHOKUさんの記事にもあった通り
磐梯熱海駅、猪苗代駅などにサイクルトレインなどがあると、さらにサイクリストにとってうれしい場所になると思います。
【ご指摘2】レンタルサイクルでは難しい
LinkTOHOKUさんの記事によると、
7/12付けの福島民報の記事で、磐梯熱海温泉にある施設のレンタルサイクルが取り上げられていたようです。
これに対するLinkTOHOKUさんのご意見が下記になります。

これに関しては、おっしゃる通りレンタルサイクルで「イナイチ」していません。
まず、このコースを作るにあたり大前提として、
中級~上級者サイクリストに輪行で来てもらうイメージで作成しているので、
そもそもレンタルサイクルでのイナイチは一切想定しておりませんでした。
福島民報さんの記事の
観光客に周遊などを楽しんでもらうと共に、猪苗代湖を自転車で一周するコース通称「イナイチ」をPRする。
という文章からも分かるように、このレンタルサイクルを設置した県中地方振興局の狙いは
磐梯熱海温泉周辺のサイクリング利用を目的に貸し出しされ、あわせて「イナイチ」PRにも繋げていきたい考えだと推察できます。
まぁ、中級~上級者サイクリストであればレンタルサイクルでも全長約85kmのイナイチを走ることは可能だとは思いますが、
かなり体力を使うんじゃないかなと思います。
例えば、それまであまりロードバイクに乗ったことのなかった方が
湯koriさんのレンタルサイクルを使い、磐梯熱海温泉周辺を周遊できるのであれば、これは素晴らしいことだと感じます。
記事の写真にサイクルラックも映っており、湯koriさんがサイクリスト歓迎の宿だということが分かります。
提案したい解決策
そもそもレンタルサイクルでのイナイチはプッシュしていません。
このイナイチコースは、基本的にはご自身の自転車で走ってもらうことを前提としております。
レンタルサイクルは、磐梯熱海温泉周辺のサイクリング利用であれば楽しめると思います。
県中地方振興局と湯koriさんの、まさに行政と民間が連携した、サイクルツーリズムにおける素晴らしい取り組みといえます。
【ご指摘2】飲食補給(休憩)や機材レスキューの場所が、西側(会津側)がほぼない。
これに関しては、本当にその通りだと思います。
猪苗代湖は、上の写真上部にはコースマップに記載されている立ち寄りスポットのほかにも、観光客でにぎわう施設などがたくさんある、猪苗代湖の中心地とも言えるエリアなのですが
写真左側(会津若松市側)が少し寂しい感じになっています。
視察時も、もう少しこのエリアに休憩場所や補給スポットがあればな・・・と思いつつも、
「まぁ、中級~上級者サイクリストなら大丈夫だろう」と目を瞑ってしまったところでした。
なので、立ち寄りスポットを入れ込んでいないエリアに入る前に
トイレやゆっくり休めるベンチが設置されている⑪のスポット【会津レクリエーション公園】を設定し
コースと同じページに掲載してあるわたしのイナイチ動画では、休憩スポットとして紹介しています。

もう少しコースを進んでみます。
画面左側の、猪苗代湖から離れる道は少し山側を走ります。
ずっと湖面だと飽きてしまうのと、このあたりの湖面沿いの道は草や木が生い茂っておりあまり綺麗に湖面を見られないことから、少し内陸に入っています。
上の写真の動画スクリーンショットを見てもらえるとわかるのですが、交通量も少なく、綺麗な里山の風景も見られて個人的にはお気に入りスポットです。
内陸部を抜けると、
このように湖面スレスレを走れる道が突如として出現し、
「湖沿いに戻ってきたぁー!」という高揚感も味わえます。笑
ちなみに、ここを走るのはめちゃくちゃ楽しいんですが、楽しみすぎてあまりにも湖面に寄ってしまうといきなり波に襲われ自転車が濡れたりするので注意です(わたしがやった)
このあたりの立ち寄りスポットを入れ込んでいないエリアを抜けると、
⑬には【大阪屋食堂】、⑱には【太田屋】と補給ポイントを設け、
わたしのイナイチ動画でも太田屋のあげゆばまんじゅうを食べて休憩しているシーンを入れ、サイクリストへの利用を呼び掛けています。

提案したい解決策
補給がほしい場合、またメカトラが起きてしまった際など、
コース上に立ち寄りスポットが見当たらないエリアは不安になるのも事実です。
今一度このエリアを見直し、立ち寄りスポットとして設定できるお店などがないか、また、やむを得ない事態が発生し途中でイナイチを諦める場合の救済措置はどうするかなど、改めて考える必要があるなと感じました。
また、LinkTOHOKUさんのご提案通り、湖岸道路の整備やサイクルステーションの設置、または
サイクリスト用の自動販売機、補給食やタイヤや替えのチューブなどある程度のメカトラにも対応できるものがあると安心かなと思います。
【ご指摘3】案内板がない。スタート地点を予め設定し、時計・反時計まわりどちらからも左折・右折の看板を設置する
これもその通りだと思います。
○○km地点、や進行方向が分かる看板、道路上の矢羽根型の案内など、絶対的にあったほうが良いと思います。
それらがあるだけでも、サイクリストに安心してもらえるでしょう。
また、このイナイチコースに関しては初めにお伝えした通り
反時計回りを推奨しております。
当初このコースは時計回りで提案いただいておりましたが
わたしが「反時計回りにしましょう」と意見し、反時計回りにしてもらいました。
反時計回りにしたかった理由としては、
・反時計回りのほうが湖面の近くを走れて気持ちいい。
・時計回りだと、走りづらいトンネルがある。
・時計回りだと、写真上部の「にぎわいエリア」が最後のほうになってしまい、ちょっと時間が遅くなると閉店してしまうお店も多く、反時計回りにして先に「にぎわいエリア」を楽しんでもらうため。
といったような理由です。
ちなみに、これは意図していませんでしたが
夕方に差し掛かってくると上のコース写真⑲あたりで
こんな感じの、猪苗代湖越しに夕暮れに染まる湖面&磐梯山が見られて、
これはこれで反時計回りにしてよかったな、と感じました。
(写真では磐梯山が隠れちゃってますが)
提案したい解決策
進行方向、距離などを記した案内板の設置。
ということで、このような経緯で生まれたイナイチコースでした。
長くなってしまったのでまとめると
・磐梯熱海温泉の利用を促したいのでスタート地点を磐梯熱海駅に設定
・ターゲット層は中級~上級者サイクリストに絞っており、初心者向けのコースではない
・レンタルサイクルでのイナイチは想定外
・反時計回りの記載がもっとしっかりあったほうが分かりやすかった
・立ち寄りスポットがないエリアは見直す必要あり
・最初の国道をはじめ、看板の設置などインフラ整備が必要な部分は多々あり
といったところでしょうか。
上記を踏まえてみると、改善点もあれど、やはり現状ある環境を利用したコースとしては間違いではなかったかなと感じます。
しかし、上記に挙げた課題のほかにも実はいろいろと思うところはあり、
たとえば、「にぎわいエリア」には道の駅・猪苗代があり、動画でもがっつりと取り上げておりますが
ここにはサイクルラックがなかったり。(撮影時点)
せめて、サイクルラック、空気入れや工具の貸し出し、パンク修理キットの販売があったらいいな、と思ったり。
また、
上の写真⑤にはサイクリングロードがあるのですが、
放置されすぎて脇には草が生い茂っており、せっかくのサイクリングロードなのにあまり綺麗な猪苗代湖を見ることができなかったり。
いろいろと課題はあるのですがしかし、
中級~上級者サイクリストというターゲット層で、
輪行で磐梯熱海温泉駅まで来てもらい、イナイチ後は磐梯熱海温泉でゆっくりしてもらう、というモデルイメージを落とし込んだ、今あるインフラを利用するコースとしては、楽しそうなコースが出来上がったな、
と個人的には思います。
しかし今回LinkTOHOKUさんのご指摘で、
感じていてもスルーしてしまっていたポイントや、新たな気付きもあり、
今後よりよくしていけるよう、わたしとしてもご協力していければなと思いました。
いちばん良くないのは、
コース作りました!UPしました!終わり!
サイクルラック置いたから!以上!
という「サイクリスト歓迎の姿勢だけ見せときゃいいだろ」の態度
これはすぐに分かりますよね。
福島県、こうならないためにもさまざまな取り組みをされていて、
まず地元の飲食店や宿を経営しているみなさまへ「サイクリストとはどういうものか」という講演会を実施しました。
わたしが講師をつとめさせていただきました。
「ロードバイクとはなんぞや?」からはじまり、
自転車活用推進法の説明、
サイクルツーリズムとは?
サイクリストが欲しいと思っているサービスって?
実際に他の自治体ではどのような取り組みが行われているか?
など、60分にわたりお話させていただいたことで、
【サイクリストウエルカムっていったってなぁ・・・】と、漠然とした疑問を持っていたお店や宿のオーナー、地元のみなさんに、
サイクリスト、自転車への理解を深めてもらえたと思います。
また、LinkTOHOKUさんの記事では
とありました。おっしゃる通りで、
確かに、このような自治体さんも多いのが事実です。
サイクルツーリズム!自転車活用!と言っているにも関わらず、その課の誰もクロスバイクやロードバイクに乗っていないとか。
「サイクリストウェルカムの地域を目指してます!」と言われても、内心
え、ほんとに大丈夫・・・???(´_ゝ`)
って感じてます。言いませんけどね。笑
対して、福島県の自転車事業は実際にロードバイクに乗っていらっしゃる役所関係の方にもお手伝いいただいており、
現に上記イナイチのコース原案を作成されたのは、実際にサイクリストである職員の方です。
今年度、新たにこの事業の担当となった方は、これをきっかけに実際にロードバイクをご購入され、
前年度に作成した上記イナイチのコースもしっかりと自分の足で走っておられました。
断じて、机上の空論でつくられたものではない、ましてやイナイチはNGパターンなどではない、ということを、僭越ながら申し上げます。
それほどまでに、福島県の自転車、ロードバイク事業に傾ける情熱は相当なものなのです。
そしてその情熱にあてられ、福島県が心から大好きになってしまった人間がわたしです。
確かに、まぎれもない正解というのはあります。
お金をかければ解決することもたくさんあります。
しかし、これはどの自治体さんでもあると思いますが、
今すぐにたくさんのお金はかけられないけれど、
この土地の魅力をPRしてお客さん、サイクリストにたくさん来てもらえるように頑張ろう、
それまで無かったものを少しずつ、みんなで造っていこう、
課題が見えたらみんなで考えて改善していこう。という姿勢。
福島県もそうですが、このようなやり方、サイクルツーリズムの進め方は、個人的にはすごく好きですし、
なによりも、お客さん、サイクリストに来てもらうのも大切なんですが、
地元の人たちがサイクルツーリズムを通して一体になっていく。
地域の良さを地元の人たちが再確認していく。
地域が元気になっていく。
この結果こそが、サイクルツーリズムを活用した地域活性化が生む宝なのです。
このような過程がわたしは大好きだし、そういう姿を見ていると、わたしも頑張りたいなと思うんです。
理想論だ、きれいごとだと言われればそれまでですが、そこの情熱だけは持っていたいなと思うんです。
だからこそ、わたしにできることは精一杯やらせてもらおうと、今回もこの記事を書きました。
イナイチのコースに関しては、初心者は厳しい!という意見がありましたが、
すみません、とりあえず上記コースは中級~上級者サイクリストに向けてのコースになります。
しかし、例えば、アクセスが不便であったり、アップダウンが多いようなコースというのは
中級~上級者サイクリストとしてはむしろ走りごたえがあって魅力のあるコースといえるのではないでしょうか?
そして、まずは中級~上級者サイクリストに来てもらい、
猪苗代湖でのサイクリングは楽しい!というイメージを世間に広く定着させることで
さらにたくさんのサイクリストが訪れるようになり、
そのようなサイクリストとの交流をしながら地元の受け入れ態勢を整え、
地域の方々の理解も深まっていったところで、
更にサイクリストの層を広げていく。
というようなステップアップも、サイクルツーリズムを推進する上では必要な過程と考えます。
なお、イナイチではないのですが
イナイチのコースを作成した同時期に、初心者サイクリスト向けのコースも作成しております。
郡山駅前をスタートし、郡山市観光を挟みながら、地元の美味しいものをたくさん食べてサイクリングを楽しんでもらおう!といった
グルメライドのコースになります。
こちらは、レンタルサイクルでのサイクリングもおススメしております。
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そして今年度は、福島県に新たに3つのコースを作成する予定でいます。
先日は、そのうちの1つのコースを視察してきました。
こちらもぜひ楽しみにしていてほしいと思います。
そして、実際に走ってみて「こうしてほしい!」というご意見・ご要望があれば、
遠慮なくお送りください。
少しずつですが、改善させてください。
最後に、イナイチのコースは本当に作って良かったと感じてます。
頑張った甲斐があったと思うし、猪苗代湖の魅力と課題も改めて考えることができました。
長く拙い文章でしたが、ここまで読んでくださったみなさま
そして、普段あまり発信できないコース作成に関する記事を書くきっかけをくださったLinkTOHOKUさんに心から感謝します。
ありがとうございました。
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